スタンバイ

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スタンバイ・デューティー

よくある現役CAブログには、フライトにまつわる華々しいことはたくさん書いてある。

反面、その裏側の事情は、差し障りのないこと範囲内で書きとどめられているようだ。

もちろん会社のイメージや一般の客室乗務員像、はては自分自身のイメージにも関わってくる問題だから、本音と建前で書き分けられてあるのは致し方ない。つまり本音はほとんど書いてないということだ。

あまり書かれていないことに、これが挙げられるのではないかな。

「スタンバイ・デューティ」

仮にジャンボ機に18人の客室乗務員が乗務するとして、一人、病欠などで急に欠員ができたとする。

該当の便は空席が多いので、17人でも業務に支障がなさそうだからそのまま運行!? というわけにはいかない。万が一の緊急脱出時の保安要員として確保された最低人員は変更不可能だから。

病欠ややむを得ぬ事情で、急に欠勤した人の代りに誰かがコールされる、スタンバイ勤務という勤務形態のこと。

私のいた外資系エアラインの場合、「呼ばれたら何時でもOK、どこにでもすぐフライトへ行けます。」の自宅待機だった。例えばあす、あさっての◯◯便など少し余裕のある場合のコールと、当日の便にいきなりコールされることもあった。

これが数ヶ月に数日程度あったのだけれどいわゆる、「ヘビの生殺し」勤務で、スタンバイ手当がそれなりに出たと記憶する。

日本人客室乗務員の場合、乗務する路線は日本便と、日本人乗客の多い特定の路線とほぼ決まっていて、世界中を網羅する全路線に乗務する現地クルーのように全運行路線に乗務することはまずなかった。このスタンバイフライトを除いては・・・。

これには天と地との差ほどあった。運が良ければ地上の楽園モルディブの海に浮かぶコテージ・ステイ7日間(便が週に1便しかないため)!

一方で「神様、私は何か罪をおかしたのでしょうか!?」と天罰のような某デスティネーションがあり、その辺はご想像におまかせする。

このスタンバイデューティ、確率的に10回に1回くらいでコールがあるだけで、たいていが休日のようにスルーされたのだが、コールされるかとハラハラ待つ状態が精神的に「ヘビの生殺し」なのだ。

基本的に自宅待機なのだけれど、「大丈夫だよ~」なんて遊びにきたほろ酔いの同期と同じ気分にはなかなかなれなかった。決められた時間が過ぎるまで時計とにらめっこ、電話の方を意識するなど、とにかく心臓に悪い。

「どうか呼ばれませんように・・・」と祈っていたのに、「リーン」と電話がなったら運の尽き、ああ・・・。

「スタンバイ・コール発令、今からこの便へ、空港へ」となるのだ。呼ばれたら最後、覚悟を決めていざ出陣。短距離と中距離、長距離便ではその運命もまた違ってくる。

ルームメイトの同期とオフが重なって約束していたのに、彼女が急にスタンバイで遠路へ飛んでいて予定変更になったこともあった。もしスタンバイのスケジュールと、決められていたシフトが重なっていたら、またそのフライトがキャンセルされて誰かのスタンバイにふられると聞いた。

実際スタンバイ日の前後は長めのオフが入っていたのだけれど、こういう意味でもヘビの生殺し状態だったのだ。急にフライトが入って長引いたらその後の予定が大きく変わってくる。

それにスタンバイ勤務は普段は乗務しない路線だから余計にストレスが大きい。その便特有のサービスに不慣れの日本人に冷たく当たるクルーもいたから。

これをなんて言うんだったかな?「出たとこ勝負」?「ロシアン・ルーレット」?

今から思えば笑える話だけれど。「◯◯ちゃん、どこどこにコールされて今機上だよ。」など、皆でよく、キツい路線に飛ばされた同期のことを面白半分、気の毒がっていた。

客層と国民性の違い、特別食の多さ、満席かそうでないか、またフライト手当もピンからキリまで。その一方で「おいしい」フライトもあることを目の当たりにした。日本行きの便は実際それに当たる。これは国内エアラインの国際線客室乗務員は経験しないことだと思う。

世界各国の乗客には様々な人種と宗教、性質と気質、価値観の違い、英語が通じない等あるので、例えばツアー客が多い大阪発などの客のほとんどが、お行儀の良い日本人というフライトなどは乗務員側にとって、どれほど「おいしい」かをクルーは皆わかっている。日本便の滞在・食事手当は会社でも最高レベルだったこともある。

そんな意味で外資系エアライン所属の、日本人客室乗務員がどれだけ恵まれていることか。日本バンザイ、さまさま。

外資所属の日本人客室乗務員からすると、人気のヨーロッパ便などにフライトできる現地クルーが羨ましかったのだけれど、運行する全路線に有無を言わさず乗務させられる彼らにしてみれば、気苦労がそれなりにあるようだった。

彼らは国内エアーでいう国内線のエアバスフライトを、日に何往復もするフライトもこなしていた。長距離便とこれと、どちらがいいかと聞かれると何とも答えにくいのだけれど。

現地クルーにはまんべんなくシフトが当たっていたのだろうか。きっと公平・不公平もあったと思う。皆、フライトスケジュールのシフト表が出る度に「オーマイ・ガー」と一喜一憂していたからなあ。